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インフェルとミミミの物語

インフェル・ピラ計画を成功に導いたグラムル、そしてその実験体としていたインフェル。この物語は、そんな2人の悲劇の物語と、インフェルが後世大事に抱え続けているぬいぐるみ「ミミミ」の物語。


1.親子

インフェルは最初その事を知らなかった。いや、計画では最後まで知らない筈だったのだ。澪の御子、いわゆる「クイーン」となる者は、メタファリカが成功した時には、大陸の礎になってしまうということを。そしてそれを理解した上で、グラムルが進行している事を。
人並み外れた才能を持っていたインフェルは、ラボから出て数年後、10歳を越える頃には既にグラムルと同等にやり合っていける程になっていた。そしてその事が、インフェルのグラムルに対する考え方を変えていくきっかけとなる。インフェルにとってグラムルは、自分に対して色々と辛い実験を課してきた相手。故に当然憎しみは感じてはいた。だが、この頃から、他の誰とも違う何かをも感じ始めていた。誰と話していてもつまらなかったインフェルだったが、グラムルと話しているときはとても楽しかったのだ。インフェルはとにかく本が好きで、御子としての権限をフルに使い、様々な本を読んでいた。年がら年中本を読んでいて、その結果数年でグラムルにしか分からないような事まで理解するようになっていたのである。
グラムルにとっても、まさかインフェルがここまで学習するとは思っていなかったため、彼女への興味は一変した。インフェルはよくグラムルの理論や話に突っかかってきていたが、グラムルはそれが面白くて仕方なかった。それはグラムルにとっても初めての事で、お互いに更に向上し合い、理論を高め合っていった。
グラムルはその時、初めて心が痛んだ。それは、自分の理論がインフェルを礎にすることに対してである。この間までは何とも思っていなかったのに、今では何とかして助かる術を考案したいと躍起になっていた。年齢差では親子ほどもある二人だったが、話している内容は対等だった。時には激論を交わし24時間を超えることもあった。その後眠りこけてしまったインフェルを担いで、御子室まで運んでいくことも何度もあった。その時のグラムルの姿を見た大鐘堂従事者は、彼の顔がいつもと違う父親の顔になっていることに驚いた。グラムルにとって、単なる実験体にしか過ぎなかったインフェルは、今彼の中で大切な家族のような存在にまでなっていたのだ。


2.ミミミ

インフェルを助ける為に、グラムルは1つの結論を出した。その結果、ある日突然グラムルは、インフェルにぬいぐるみを渡す。折しもその日はインフェルが御子に就任した日。インフェルは照れ隠しながらも内心とても嬉しく、そのぬいぐるみに「ミミミ」と名前をつけて大事にした。そのミミミには面白い機能が付いていた。インフェルがそのぬいぐるみを抱えた状態で心情が変化すると、そのぬいぐるみの顔が変化するのだ。如何にもグラムルの贈り物らしい。インフェルはその理屈を知りたくて中を開けてみたかったが、その為にはミミミを破ってしまう事になるため、それは出来なかった。それ以降、インフェルはミミミを常に持ち歩いていた。表面上は特に興味のない振りをし、「持たされている」と周囲の人には言い続けていたが、実際はと言えばいつも持っていたかったのは自分の方だった。ずっと一人で育ってきたインフェルにとって、こういった形でのプレゼントは始めてであり、何より唯一とも言える自分の理解者からの贈り物という事が、無条件に嬉しかったのだ。憎んでいるのも本当。でも長年グラムルとの対話を続けてきたインフェルは、それがこの世界を救うための必要悪であったという結論に到達しつつあり、更には誰よりも自分を分かってくれているグラムルに対し心を許してきていたのである。
しかし事態は急変した。グラムルのインフェル・ピラ理論が、澪の御子を犠牲にするものであることを、誰かが民衆に公言してしまったのである。それによりグラムルは民衆から大きな非難を浴びることになる。そしてそれに対し最もショックを受けたのは、他ならぬインフェルだった。自分が犠牲になる事など聞いてはいなかった。今まで心を許し、信頼をしてしまっていた分、そのダメージは大きかったのである。グラムルは失脚し、大鐘堂を追われることになった。その時にもインフェルはグラムルと挨拶一つしていない。そしてミミミも捨ててしまおうかと思った。だが、それだけは出来なかった。結局どうしてグラムルが急にミミミをくれたのか、分からずじまいだった。


3.メタファリカの代償

その後インフェルは、グラムルの後任となってメタファリカプロジェクトを推進していく。インフェルはなりふり構わず研究に時間を費やした。逃げれば簡単に命は助かる。だが彼女のプライドはそれを許さない。ならば結論は1つ。自分が自分自身を犠牲にしない、新たなメタファリカ理論を考案すること。彼女には勝算が無いわけではなかった。今まで修得してきた知識と研究から、何とか導き出せそうだったのだ。しかしそう簡単には解明できず、何度も挫折しかけた。そして何度も逃げかけた。その度にミミミも涙を流し、インフェルはそれを見て気を取り直し、再挑戦した。そして少しずつ理論を固めていき、いよいよ最終段階…という所まで来る。インフェルは四次正角性中核環、いわゆる大地の心臓を導き出す為の理論を確立した。そしてそれと同時に、インフェルは気づいてしまったのだ。

ミミミが感情に反応する理由。

彼女は少しためらった後に、ミミミの中を見てみる決心をする。そしてインフェルの予想通り、中にはそれが入っていた。三角中核環。レーヴァテイルの心臓とも言われている機関で、この世界ではもう作ることが出来ないと言われているもの。そしてそれと一緒に入っていた転写セロファン。それはまさに、インフェルをI.P.D.レーヴァテイルに移行する時に使った転写セロファンそのものだったのだ。そう、ミミミはまさにインフェルの分身。もう一人のインフェル。その三角中核環は、作為的にか失敗なのか、身体を紡ぐことも、想いを紡ぐことも出来ないようになっていた。更に、不完全ながらも生きているその三角中核環は、インフェルと同じ転写セロファンによって精神世界アドレスをインフェルと共有していたのである。なぜそんな事をしたのか、インフェルにはすぐに理解できた。そう、ミミミはインフェルの代わりに、メタファリカの人柱となる為に生まれたのだ。グラムルは四次正角性中核環の理論までたどり着けなかった。だがその中でインフェルを助ける方法を、彼なりに必死で考えていたのだった。
インフェルは、バカだわ…と思った。確かにミミミは、インフェルの身代わりになって避雷針の役割をしてくれる。だが、ミミミが人柱となって大地の核になったところで、ちゃんとした大陸が紡げるわけがない。グラムルはそれを分かっていて尚、私にこれを持たせたのか。それとも分かっていなかったのか。グラムルを良く知るインフェルにとって、後者の答えはあり得なかった。だからこそ、尚更思ったのだ。本当に大バカだわ…と。

何だか急にグラムルに逢いたくなった。だけどそれはもう無理な願いだった。なぜなら、彼はこの時既に他界していたのだから。